七帝柔道記
増田俊也 著 /
みなさん、高専柔道というのをご存知だろうか。
現在柔道には、オリンピック競技に採用されてる講道館柔道と、本著に描かれている高専柔道とがある。
講道館柔道が立ち技中心であるのに対し、高専柔道は寝技中心の柔道。
しかし、この高専柔道を行なっているのは、今や北海道大学、東北大学、東京大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学の七大学のみである。
創設期から続く柔道形態で、講道館柔道が一般化した中でも、脈々と受け継がれている団体戦。
勝敗は全てを一本勝ちのみ。
投げるか、関節を極めるか、締め落とすか。
場外もなく、ノンストップで闘いは続く。
その七大学が年に一度、部の誇りや尊厳、己の想いと共に闘いを繰り広げるのが、七帝戦である。
「練習量が全てを決する」
と言われるように、寝技中心の高専柔道の練習量は生半可ではない。
来る日も来る日も先輩に絞め落とされ、関節を極められ、彼らは大学生活の全てを柔道に捧げる。
凍てつく北海道の武道場。
寝技乱取りを無限に繰り返す彼らの身体から発散される汗の蒸気で、ガラスが曇り続ける。
プロの柔道家にはなれない、柔道で名を挙げようなどとは考えていない。
ただ、七帝戦での勝利あるのみ。
その単純でいて、愚直なまでの強烈な想いが彼らを突き動かす。
なぜ華やかな学生生活の青春を捨ててまで、地獄のような烈火のごとく練習に耐え続けられるのか。
そこには彼らのもうひとつの青春がある。
「部を4年間続けて、後悔した者など誰ひとりいない、だから辞めるなっ」
「繋ぐんじゃ!想いはのう、生き物なんで。想いがある限り繋がっていくんじゃ!たくさんの先輩の想いを繋いできた。胸には先輩たちの想いがしっかりと宿っちょった!」
彼らは今日も、畳の上に足を踏み出す。
連続最下位に甘んじている北海道大学の再起にかける柔道生活が描かれる。
凄まじい練習風景、緊迫する激動の七帝戦、先輩と後輩の心の交流、部員たちの心の葛藤と成長…
一気読み必死の青春小説の金字塔!
圧倒的な熱量にやられます。
★ハッとしてグッとポイント★
七帝戦において、彼らは締められても、関節を決められても誰ひとり参ったをしない。
だから、失神する者、骨折する者が後をたたないのである。
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