冷血

高村薫 著 / 


〈スタッフ募集。一気ニ稼ゲマス。素人歓迎〉


求人サイトへの思いつきの書き込みから、顔を合わせたばかりのふたりの男が、衝動のままにATMを破壊し、通りすがりのコンビニを襲い、目に付いた住宅に侵入。

そして、両親とふたりの子供、一家殺害という凶行に及ぶ。


それはあまりにも安易に行われた殺人だった。

「分からない」「目の前にいたからやった」「殺すつもりはなかった」


二転三転する供述、いく層にも重なっていく真実。

容疑者はすでに犯行を認め、事件は容易に「解決」へと向かうと思われていたが…


徹底した現場取材と綿密な構成で定評のある高村文学の最高峰と言える、濃密な人間ドラマ。

前半で、男ふたりの犯罪の軌跡を描き、中盤から後半は、なぜこの男ふたりが犯行に走ったかの内面が、克明に描かれる。


事情聴衆で、警察が犯人の内面へと分け入れば、そこに広がるのは果てのない荒野だ。

殺したという罪悪感もなければ、なぜ殺さなければならなかったのか、その動機すらない。

一家四人の死体と血まみれのふたりの男が佇む荒野だ。


激しい憤りと、無力感にさいなまれながらも犯人と対峙しなければならない。

その荒野の先には何があるのか。


この身もふたもない世界は、何者かがあるという以上の理解を拒絶して、とにかく在る。


我々はその一部なのだ。


圧倒的な熱量とこの物語の最終地点にあなたは何を思う。


★ハッとしてグッとポイント★

子どもを二人も殺した私ですが、生きよ、生きよという声が聞こえてくるのです。

読んだら忘れないための備忘録

歳を重ねるにつて、読んだ端からすぐ忘れては、本屋でお気に入りの本を手に取り、帰ってみたら、自宅の本棚に全く同じものがある光景に辟易してしまう。 そんな負の連鎖を極力避けるべく、またせっかくの学びをより確かなものにするための備忘録です。

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