涙香迷宮
竹本健治 著 /
唐突ですが、みなさん、「いろは歌」というものをご存知であろうか?
全ての仮名文字(47字、又は「ん」を入れた48字)を重複せずに一文字ずつ使用し、五七調でつくられた歌。
例えば、こんな感じ、
色はにほへど 散りぬるを
我が世たれぞ 常ならむ
有為の奥山 今日越えて
浅き夢見じ 酔ひもせず
聞いたことありますよね?
これを仮名文字にすると、
いろはにほへと ちりぬるを
わかよたれそ つねならむ
うゐのおくやま けふこえて
あさきゆめみし ゑひもせす
全く一文字も重複せずに、意味のある歌になっています。
パンダグラムというパズル的要素を取り入れた言葉遊び。
このいろは歌というものを、涙香(るいこう)なる人物は、ひたすら考え続け、まさに奇跡としか言いようのない、多数のいろは歌を完成させる。
当本では、涙香が残した驚愕のいろは歌に隠された暗号を、ミステリー要素を加え、ひたすら思案し、解明に至るというもの。
物語中盤では、涙香のいろは歌がこれでもかってくらいに紹介され、それはそれは凄まじい超絶技巧です。
言葉の奥深さ、奇跡のような言葉遊びに感動すら覚える。
ただ、肝心のミステリー要素はとてもライトで、正直どうでもよくなる。
涙香は、いろは歌以外でも、自身で新聞を発行したり、囲碁や将棋、カルタやビリヤードまで、数々の趣味を持ち、どれもこれも深く精通し、万能の天才と言われるほど、かなりの傑物で興味深い人物である。
今年のミステリーNO1との呼び声が高いのですが、私は「罪の声」(備忘録その69参照)を強く押す。
★ハッとしてグッとポイント★
漫画「ちはやふる」でお馴染みの競技カルタ。
そのルールを作り、競技にしたのが、言わずもがなこの涙香である。
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