ブラックデザイン

平野敬子 著 / 


みなさんの記憶にもまだ残っていると思われる五輪エンブレム問題。

盗作疑惑に世論が沸騰した佐野研次郎氏のエンブレムを巡って、佐野氏の作品を撤回し、白紙に戻し、再び選考し直すという大混乱を招いた一件。


そのエンブレム選考委員会のメンバーの一人が平野氏である。


佐野氏の盗作疑惑、白紙撤回という一連の騒動を目の当たりにし、もう一度改めて、エンブレムの選考の経緯を考察したところ、不可解で納得のいかないことが続々と露見する。


応募者の中には招待作家という枠があり、その8名の中に佐野氏が入ってたこと。

それを応募者はもちろんのこと、審査委員にも事前に知らされてなかった。


佐野氏の作品が白紙撤回されたことを受け、平野氏があの選考は公平に行われていたかどうか検証するために、もう一度最終候補作品を見せて欲しいと、度重なる要請を組織委員会に訴えたが、守秘義務の一点張りで、微動だにせず。


佐野氏の作品の白紙撤回の承諾を8人の審査委員からの得たと(平野氏は承諾してない)、嘘の報告書を作成し、その事実を本人は、会見で知ることとなる…


なぜこのようなことがまかり通ってしまうのか。


国家規模のイベントの重要な案件にも関わらず、なぜ国民は嘘で塗り固められた報告を一方的に聞かされなくてはならないのか。


その一連の経緯が、時系列とともに詳細に克明に、平野氏の言葉で強烈に語られています。


「この絶望感や屈辱感に苛まれた苦渋の時を経たことで、行動を起こす勇気が湧きました」


「問題の根本的な解決を目指すには、様々な場所で健全な議論が起こり、言葉が交わされていくことが必要なのだと考えています。

当事者でありながら発言せず、沈黙を貫き、時が過ぎることを待つだけの組織は、責任を放棄した、非社会的なカルト集団だと認識されることでしょう」


平野氏は過去に国際美術館のロゴマークを作成したり、数々の名誉ある受賞歴をお持ちの方、故に今回の審査員にも選出されているのですが、その彼女が公の場で、自身の著名入りで発言をすることは、今後の制作活動にも大きな影響を及ぼす覚悟でのこと。


大きな目的の為に不正を不正と思わず、「結果第一主義」にどっぷり浸かり、手続きの公正さを軽視し、コンプライアンスに目をつぶる、なりふり構わぬ愚行により生み出されたものは、ブラックデザインでしかない。


我々はこのブラックデザインを東京オリンピックのシンボルとし、2020年を迎えることとなるのだ。


★ハッとしてグッとポイント★

今回の備忘録は本によるものではなく、平野氏が開設したブログを読み、その生きた言葉の力強さと内容に感銘を受け、まとめたものである。

読んだら忘れないための備忘録

歳を重ねるにつて、読んだ端からすぐ忘れては、本屋でお気に入りの本を手に取り、帰ってみたら、自宅の本棚に全く同じものがある光景に辟易してしまう。 そんな負の連鎖を極力避けるべく、またせっかくの学びをより確かなものにするための備忘録です。

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