みかづき
森絵都 著 /
昭和36年、ベビーブームと高度経済成長を背景に、主人公の千秋は学習塾を立ち上げる。
かつて戦時中、千秋は国民学校で、自由に考えることを抑制され、国の随意に操られる教育に疑問を抱き、新たな教育を開拓する道を選ぶ。
自分で考える力、知の種を子どもたちに植え付ける教育、それこそが千秋の目指すものだった。
学校教育が太陽なら、塾は月となって子どもたちを照らし続けよう。
夫の吾郎と共に塾は、順風満帆のスタートを切り、着々と理想の教育を目指し、進んでいくものとばかり思っていた。
しかし、時代に流れとともに塾の立場が、成績を上げるための場、優秀な学校に進学するための場になり、次第に道を迷い始める。
新たに参入してくる大型塾との生徒の取り合い、文部省が唱える教育との対立、ますますエスカレートする親たちの無理な要求…
取るべき舵を失い、塾の生き残りに迷走し、あの手この手と活路を見出そうとする千秋。
しかし、そこにはもはや教育者の顔はなく、狼狽する経営者の顔しかなかった。
そしてついに、そんな千秋の経営方針に反目する塾長の吾郎に解任を言い渡すのである…
昭和から平成の塾業界を舞台に三世代に渡って、理想の教育とは何かを追い求める、山あり谷あり涙ありの物語り。
学級崩壊、無気力化する子どもたち、加熱するモンスターピアレンツ、保身しか頭にない救育委員会…
混沌とする現在の教育現場に必要なものがここには描かれている。
戦後日本の大人たちは、みんな教育に熱心だった。
もう一度取り戻そう、子どもたちの頭上に大きな月を。
★ハッとしてグッとポイント★
どんな子であれ、親がすべきことはひとつよ。
人生は生きる価値があるってことを、自分の人生をもって教えるだけ。
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