諦める力
為末大 著 /
「やればできる」「夢は叶う」「可能性は無限だ」
こういう考え方を完全に否定するつもりはない。
しかし、ダメなものはダメ、というのもひとつの優しさである。
いくら努力を重ねても、結果がついてこないことがある。
まだ努力が足りないのか…いつになったら…
いや、そうではない。
その環境が自分に向いてないだけだ。
ならば、諦めてやめればいい。
「諦める」と聞いて、「見込みがない、仕方なく断念する」とまず思い浮かぶだろう。
しかし、「諦める」の語源は「明らめる」であり、心理や道理を明らかにして、よく見極めるという意味で使われ、むしろポジティブな思考なのだ。
自分の才能や能力、置かれた状況を明らかに理解し、今、この瞬間にある自分の姿を悟る。
そしてより自分に合った、強みを生かせるフィールドで戦えばいい。
道はひとつではないが、ひとつしか選べない。
Aという道を進みたければ、Bという道を諦めるしかない。
最終的に目的に到達することと、何かを諦めることはトレードオフなのだ。
何ひとつ諦めないということは、立ち止まっていることに等しい。
諦めることによって、修正し、選び直すのだ。
どんなに努力しても、手の届かない範囲はある。
しかし、努力することで進める方向というのは、自分の能力に見合った方向なのだ。
進むべき道は努力を娯楽化すること。
諦めるべき道は努力が苦役でしかないとき。
人生は長く、勝負は無数にある。
目的さえ諦めなければ、手段はいくらだって変えてもいい。
何かを真剣に諦めることによって、「他人の評価」や「自分の願望」で曇った世界が晴れ、「なるほど、これが自分なのか」と見えなかったものが見えてくる。
続けること、やめないことも尊いことだが、それ自体が目的になってしまうと、自分という限りある存在の可能性を狭める結果となる。
前向きに諦める。
そんな心の持ちようがあってもいいのではないだろうか。
★ハッとしてグッとポイント★
自分のことを正確に認識し、その自分が通用する世界をきちんと探す。
今の自分の力で、「やりたいことをやる」のか、それとも「できることをやる」のか、どちらを取るかということだ。
0コメント