蜜蜂と遠雷
恩田陸 著 /
世界各国から天才と呼ばれる強者どもが集まる、ピアノコンクールという舞台。
かつて天才少女と呼ばれ、数々のジュニアコンクールを制し、母の死を境にピアノが弾けなくなった者。
音大を卒業したものの、今はサラリーマンとして年齢制限ギリギリの崖っぷちで挑戦する者。
名門音楽院を卒業し、将来が約束された者。
様々な環境で育まれた才能と運命が交錯する中、ひとりの異分子とも言える少年がその場所に降り立つ。
今までの音楽の価値観や歴史などを遥かに超越する、聴く者の感情を激しく揺さぶる演奏は、時に大絶賛を浴び、時に嫌悪し拒絶する。
彼は、この音楽界の「ギフト」である。
しかし、彼は決して甘い恩寵(おんちょう)などではない。
彼は劇薬なのだ。
試されているのは彼ではなく、我々や審査員なのだ。
さあ、彼を「体験」する者の中に真実はあるー
ひとつのピアノコンクールの始まりから終わりまでを丹念に描きあげる群像劇。
ピアニスト、審査員、観客、調律師、進行スタッフ、様々な視点で、コンクールの模様が隅々まで描けれていて、まるでその場にいるような臨場感がある。
特にピアノ演奏の表現が、とても情緒豊かにきめ細やかに描かれていて、実際は聞こえもしない音楽が、まるで聞こえてくるような感覚を覚える。
音楽の素晴らしさ、残酷さ、人生の挫折、苦悩、そして成長、全てがコンクールという空間に凝縮し、様々な人間模様が見られる。
少年は言う。
どうすれば、この音楽を広いところに連れ出せるのだろう。
でも僕は、きっと約束通り、音楽を連れ出してみせるよ。
★ハッとしてグッとポイント★
ピアノコンクールに参加している者を「コンテスタント」と呼ぶ。
まるで剣闘士みたいで、カッコいいなと、思うのである。
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