つきのふね
森絵都 著 /
「この頃わたしは人間ってものにくたびれてしまって、人間をやってるのにも人間づき合いにも疲れてしまったー」
万引きで捕まり、心にもなく友人を裏切ってしまったさくら。
さくらと距離を置き、不良グループの仲間に逃げ込む梨利。
さくらを助け、来たる世紀末に向け、人類を救うべく宇宙船建設に没頭する智。
執拗なまでにさくらと梨利の仲を取り繕うとする勝田。
中学生時代の多感な時期、誰もが通る、脆弱で危うく、感情が交錯する瞬間。
先の見えない人生の闇の中を、一筋の光を求め疾走する。
「自分だけがひとりだと思うなよ!」
さくらの唯一の心の拠り所だった智の精神は静かに崩れていき、度重なる近所の放火事件が話題となり、親友の売春疑惑が発覚する。
「ごめんね…宇宙船ができても、わたし、乗らない」
何度も再読を繰り返しても、胸に迫り、深みを増す物語り。
物語りラスト、さくらたちが廃校になった小学校に向かう辺りから最後にかけては、凄まじい迫力で、物語りは一気に暴走し、読者を圧倒する。
そして、文学史上、最高に美しくドラマチックな場面で幕を閉じる。
備忘録では語り切れない、より多くの人に読んで欲しい物語りのひとつです。
★ハッとしてグッとポイント★
人より壊れやすい心に生まれついた人間は、それでも生きていくだけの強さも同時に生まれもっている。
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