ガラパゴス
相場英雄 著 /
けして新聞やテレビで流れることのない社会の歪み、闇の世界がある。
著者の処女作「震える牛」でもその圧倒的な真実に身震いした覚えがあるのだが、今回の作品も結構なヘビー級なパンチ力である。
劣悪な環境化で働かざるえない派遣労働者の実態が浮き彫りになる。
コスト削減のために企業が取る人件費削減という強行手段。
そのしわ寄せが、地方の大規模工場で働く派遣労働者への、もはや人間扱いとは思えぬ非情な環境へと向かう。
順調に売り上げが伸びているときは増員し、低迷してくれば、即切っていく。
労働者の労働力を「加工費」と呼び、まるで部品のひとつのように扱う。
そこで働く労働者は、首を切られれば、生きていく糧を失う恐怖に怯え、まともな住居も与えられず、派遣会社に多くの賃金を搾取され続けても、そこから抜け出すことはできない。
そんな派遣労働者のひとりが、アパートの一室で、自殺と見せかけられ殺される。
そこにどんな動機があり、誰が手を下したのか…
そこには現在日本が抱える歪みきった異常な世界がある。
派遣会社は、他に行き場所のない彼らを盾に
「我々は彼らの最後の受け皿だ。我々がいなければ、彼らは路頭に迷い、この現状に国はなんの対策もしないではないか。しかも企業はこの労働力でさんざん潤ってきている。」
とこの経済を支えているのは我々だと豪語する。
企業は利益優先で、末端で働く者への敬意はひとかけらもない。
そんな現状を全く知ることなく、消費者は企業から提供される、商品、サービスを受け続けている。
我々はそんな悪夢のスパイラルの中で生きているという事実に、少しでも近ずくべきではないのだろうか。
★ハッとしてグッとポイント★
「世界で一番企業が活躍しやすい国」とは「世界で一番労働者がこき使われる国」である。
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