雪の鉄樹

遠田潤子 著 / 


圧倒的な熱量と物語の展開に一気読み必至の作品。


腕のいい庭師であり寡黙な男、雅雪。

彼は事故で両親を亡くし、祖母に育てられている遼平を幼い頃からずっと献身的に世話をしている。


しかし、遼平の祖母は頑なに雅雪の存在自体を忌み嫌い、辛辣に罵倒し、蔑む。

なぜそれ程までの扱いを受けてまで、ずっと頑なに遼平の面倒をみているのか。

そこには13年前の事故によって、遼平が両親を失ったことと関係があるらしい。

その贖罪のために雅之は、13年もの間ずっと遼平を支え続ける。


その事件が一体何だったのか?

なぜ直接罪を犯していない雅之が、自分の人生をかけてまで、遼平を守り続けるのか。

前半はその真相に触れることなく、雅雪の孤独に焦点が当てられる。


彼は女癖の悪い「たらしの家」の祖父と父と一緒に過ごすが、愛情のかけらもなく、見放される。

ずっと一人で食事をしていたので、今では人前で食事が出来ない。

無理に口に運ぶと吐き出してしまうのだ。

さらに彼の全身は火傷に覆われ、皮膚が引きつり、思うように手足が動かない。


そんな贖罪の日々の雅之にも僅かな光がある。

13年前の事故が原因で、裁かれ刑期を終えて、数日後に出所してくる恋人に会うことだ。


しかし、13年前の事件の真相を知った亮介は、雅之の今までの行為に対して、怒りに震え、関係性が崩壊していく…


雅之の贖罪の日々は無駄に終わってしまうのか。

両親を失い、信じる者を失った亮介に救いがあるのか。


過去の衝撃の事実に直面した時、物語りは一気にうねりをあげて、動き出す。


人の残酷さと優しさが織りなす、凍える魂の救済。

この負の連鎖には終わりはあるのか。

読んだら忘れないための備忘録

歳を重ねるにつて、読んだ端からすぐ忘れては、本屋でお気に入りの本を手に取り、帰ってみたら、自宅の本棚に全く同じものがある光景に辟易してしまう。 そんな負の連鎖を極力避けるべく、またせっかくの学びをより確かなものにするための備忘録です。

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