シャープ崩壊
日本経済新聞社 著 /
日本を代表する名門企業シャープ。
「目のつけどころがシャープでしょう」というキャッチコピーで、馴染みがある。
世界に誇る液晶技術で、AQUOSといった液晶テレビの礎を創り、一大ブームに躍り出た。
そんな数々の輝かしい歴史とは裏腹に、長年巨額な赤字経営に苦悩し、挫折し、次第にそのほころびは広がり、大企業の歴史的崩壊へと繋がる…
一体どうして、このような事態を招いてしまったのか、一体誰が、この名門企業を壊してしまったのか…
その過程が、綿密な取材と関係者の証言により克明に語られる。
それは、一言で言ってしまえば、上層部幹部による、人事抗争に他ならない。
この赤字経営のツケを誰が払うのか?
数々のトップの頭をすり替え、己の面子や誇りを守り、保身に明け暮れる日々。
経営方針はどこへやら、そこには従業員の影すらない。
シャープの最大の失敗は、液晶ブームの真っ只中に多額の投資をした亀山工場の建設だ。
液晶テレビなら亀山モデルとブランド力は飛ぶ鳥の勢いを見せていたが、次第に液晶テレビも飽和状態になり、海外の液晶メーカーの台頭、円高の影響もあり、国産の家電が売れなくなっていく。
ここで、何らかの方向転換や海外メーカーとの合併などの話も出てくるのだが、液晶技術ならどこにも負けないという、プライドが足かせとなり、思い切った舵取りが出来ず、船はさらに荒波へと突き進む結果となる。
自らが生み出した世界最高の技術が己の首を絞め続ける。
この最大のジレンマに臨機応変に対応できる経営者、つまりリーダーがいなかったことが、シャープの不運だとも言える。
企業のブランドイメージや、過去の栄光ばかりに気を取られ、従業員の叫びには耳も貸さず、大規模なリストラや給料カット、経費削減により痛みを与える続ける。
どんなに素晴らしい技術があっても、どんなに素晴らしい経営理念があっても、そこに従業員の姿がなければ、必ず失敗する。
経済の流れで運良く短期的に成長はするが、長い目で見れば必ず崩壊する。
シャープもその例に漏れず、大敗した。
画期的な文具、シャープペンシルを生み出し、太陽電池、電子式卓上計算機を開発し、世界一の液晶モニターを生み出してきた。
そんな世界に誇る日本企業が消滅する。
勝者なき権力闘争に巻き込まれた大企業に待ち受ける現実は、絶対権力という魔性に取り憑かれて破滅する人間の悲劇でしかなかった。
「馬をくれ!馬を!代わりにこの国をやるぞ、馬をくれ!」
ウイリアム・シェイクスピア 「リチャード3世」より。
★ハッとしてグッとポイント★
このシャープの惨劇は人災に他ならない。
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