巨鯨の海

伊東潤 著 / 

 

かつて日本は捕鯨大国であった。

その中でも、紀伊半島の漁村、太地(たいじ)では、世界的にも珍しい、集団で捕鯨をする「組織捕鯨」という地域社会が存在した。


船をこぐ者、銛を放つ者、解体する者、指示を出す者、それぞれの役割分担が明確に分かれ、巨大な鯨との命懸けの駆け引きが行われる。

 

捕鯨とは一歩間違えば、命を落とすもの、そのため村人は厳しい掟やしきたりの元、生活を営む。

その掟を破ったものは、村から追い出され、二度とその地を踏むことはない。

 

また、激しい共同社会故に、よそ者は根付くことを許されない。

その厳しい社会で、それぞれの想いを抱き、人々は唯一の生活の糧である捕鯨と向き合い、自らの生を謳歌する。

 

時に生々しく、迫力ある「組織捕鯨」の描写が素晴らしく、そこで生き抜く人々の生き様が、色濃く描かれていてとても興味深い。

  

江戸初期明治へ、共同体の熱狂の季節と終焉を躍動感あふれる文体で描く。

 

日本の捕鯨の歴史も垣間見れて、連作短編ながら、どの物語も余韻にひたることの出来る良作です。

読んだら忘れないための備忘録

歳を重ねるにつて、読んだ端からすぐ忘れては、本屋でお気に入りの本を手に取り、帰ってみたら、自宅の本棚に全く同じものがある光景に辟易してしまう。 そんな負の連鎖を極力避けるべく、またせっかくの学びをより確かなものにするための備忘録です。

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