ひとを「嫌う」ということ
中島義道 著 /
ひとを好きになることの素晴らしさ、豊かさを伝える書物はうんざりするほどたくさんあるが、ひとを嫌うことの「自然さ」について論じた書物がないのはなぜだ、驚きあきれるばかりだと、「ひとを嫌う」ことに正面を切って、体系的に徹底的に論じたのが本書である。
ひとを嫌い、嫌われ、家族からも総スカンを喰らってしまった、闘う哲学者ことに中島氏の論理的かつ哲学的な探究心に「嫌う」美学すら感じてしまう。
そもそも人間は、全てのひとを好きにはなれない。
しかし、世間では「ひとを嫌ってはいけない」という大前提で、ことを進めようとし、ひとを嫌うことの自然性を無視している。
ひとを好きになるのが自然なら、その反対のベクトルを持った嫌いになることも自然なはずだ。
ここで中島氏が問う「嫌い」とは異常心理学や犯罪心理学、また宗教観や文化の相違の分野にはなだれ込まず、日常的な「嫌い」に固執する。
これこそが我々を悩ます難問なのだ。
上司が嫌い、友達が嫌い、恋人が嫌い、家族が嫌い…今まで平穏だった世界が何かのきっかけで反転することがしばしばある。
それを「悪い」又は「邪悪」なものと捉えず、ごく自然な人間としての成り行きであると捉えることが重要である。
時には他者から嫌われることも当然あるが、それに対しても目くじら立てることなく、それすらも自然な成り行きのひとつだと捉え、適度な距離感を持って接するのが成熟した大人の行動というものだ。
俗に善人と呼ばれる人は「嫌い」と向き合わない人と言える。
様々な強度の様々な色合いの「嫌い」と「好き」が彩っている人生こそ、素晴らしいものではないのか。
そこからあなたは様々な他人との関係の仕方を学び、そこで抵抗力をつける技術を学ぶことができる。
適度に「嫌い」のある人生こそ、豊かな人生である。
以下、ひとを「嫌う」主な原因。
・相手が自分の期待に応えてくれない
・相手が現在、あるいは将来の自分に危害を与える恐れがある
・相手に対する嫉妬
・相手に対する軽蔑
・相手が自分を「軽蔑している」という感じがすること
・相手が自分を「嫌っている」という感じがすること
・相手に対する絶対的無関心
・相手に対する生理的、観念的拒絶反応
どうです?何か当てはまるものが必ずありますよね。
ひとを「嫌う」ことにお悩みの方、とても興味深い考察があります。
一読の価値有りですよ。
★ハッとしてグッとポイント★
どれほど「好き」かを語るより、どれほど「嫌い」かを語り、みんなの共感を得たいのが、人というものなのです。
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