羊と鋼の森

宮下奈都 著 / 


放課後、学校の体育館にあるピアノ。

ひとりの調律師が鍵盤を叩く。

そこに偶然出くわした青年。


「その人が鍵盤をいくつか叩くと、蓋の開いた森から、また木々の揺れる匂いがした。」


その刹那、青年はピアノから溢れ出る音色に魅せられ、調律師の道へと歩き出す。

特別に音楽に詳しいという訳でもない、ピアノも弾けない、ましてや絶対音感なんて持ち合わせていない、そんな自分が目指す場所はどこかのか…


青年は、ピアノの森に迷い込み、幾度となく来た道を引き返しては、また一歩踏み出す。

共に働く調律師の先輩から多くのことを学び感じながら。


「才能っていうのはさ、ものすごく好きだっていう気持ちなんじゃないか。

どんなことがあっても、そこから離れられない執念とか、闘志とか、そういうものと似ている何か」


悩み戸惑いながら、自分の道を探し歩く青年の前に、ひとりのピアニストの少女が現れる。


「彼女のピアノは世界と繋がる泉で、涸れるどころか、誰も聴く人がいなくなったとしても、ずっと湧き出続けている」


彼女のピアノの音色に触発され、その音色を導く礎になりたいと強く想う。


「ピアノで食べていこうなんて思ってない。

ピアノを食べて生きていくんだよ」


そんな強い意志の彼女のピアノに必死に喰らい付き、ただただひたすら高みを目指す。

共に歩み続ける森の中に、彼らの目指す音色はあるのか…


「ピアニストと調律師は、きっと同じ森を歩いている。

森の中の別々の道を」


全編ピアノの愛に満ちた物語り。

ピアノから溢れ出る音楽を、情感豊かに美しく描く。

青年の成長と共に、大切なものに気づき、学ばせてくれる。

「羊と鋼の森」というタイトルも秀逸。


とても心の底にじーーんと響き渡る素敵な音色(物語り)です。

本屋大賞は伊達じゃない。

きっとこの物語も映画になるんだろうな。


※2018年に映画化するようです。


★ハッとしてグッとポイント

音楽は人生を楽しむためのものだ。

決して誰かと競い合うものじゃない。

競ったとしても、勝負はあらかじめ決まっている。

楽しんだものの勝ちだ。

読んだら忘れないための備忘録

歳を重ねるにつて、読んだ端からすぐ忘れては、本屋でお気に入りの本を手に取り、帰ってみたら、自宅の本棚に全く同じものがある光景に辟易してしまう。 そんな負の連鎖を極力避けるべく、またせっかくの学びをより確かなものにするための備忘録です。

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