不屈の棋士
大川慎太郎 著 /
羽生は将棋ソフトより強いのか。
江戸時代から400年以上の歴史を有する将棋界。
棋士は常に実力最強の存在だった。
棋士はその誇りを胸に競い続け、将棋ファンは尊敬と憧れの念を抱いていた。
強さこそ、棋士最大の存在価値だった。
コンピューターの将棋ソフトが驚異的な力をつけるまでは。
2012年、当時、将棋連盟会長を務めていた永世棋聖の米長邦雄との歴史的闘いを皮切りに、棋士対コンピューターとの闘いは一気に加速する。
しらみつぶしにあらゆる手を瞬時に読み取る「全幅探索」とソフト自身があらゆる棋譜を参考にし学習する「機械学習」により、日進月歩で強くなるコンピューター。
コンピュータの強さを認めながらも、抗う棋士、割り切ってしまう棋士、無視する棋士。
由緒ある誇り高き天才集団は、このまま将棋ソフトという新参者に屈してしまうのだろうか。
劣勢に立たされ、窮地に追い込まれた棋士たちは、今何を考え、どう対処し、どんな未来を描いているのだろうか。
将棋界の未来を担い、最前線に立つ11人の棋士たちの言葉。
それぞれの価値観、立場から、その想いは複雑だ。
現在、若手の棋士たちには、積極的にコンピューターのソフトを活用し、棋力を上げようとする傾向が顕著に出てきている。
コンピューターが強いからどんどんいい手を教えてもらえる。
しかし、自分で読まないなら地力が付かないと説く棋士もいる。
人間は必ずミスをする。
特に終盤にかけて残り時間が1分指しの状況下では、極限の我慢比べとなる。
コンピューターにはそれがない。
どんな状況下においても、相手の感情など読む取る間も無く、一切の容赦がない。
2015年10月、情報処理学会は、「事実上コンピューターは、トップ棋士の実力に追いついた」と発表。
「羽生さんが負ける姿は見たくない…」
ある棋士が沈痛な思いで語る。
将棋ソフトという「強手」に、局面打開の「勝負手」はあるのか。
今、棋士たちは大きな変革期を迎え、人間にしか指せない「新手」を模索する。
★ハッとしてグッとポイント★
人工知能に追い詰められた「将棋指し」たちの覚悟と矜持(きょうじ)。
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