漁港の肉子ちゃん
西 加奈子 著 /
男に騙され、逃げられ、借金を背負わされ、追いかけるを繰り返し、流れ着いた北の街。
そこの漁港の焼肉屋で、いつも元気で底抜けに明るく働く肉子ちゃん。
太っていて、不細工で、いつも大声で話す肉子ちゃん。
その娘のキクりんは、そんなお母さんを最近は恥かしいと思う。
自意識が急速に芽生え始める、小学校五年生の少女にとっては、その母の行動は甚だリスクが高すぎる。
そんなキクりんの気持ちを知ってか、知らないのか、いつもマイペースで、鈍感で無頓着な肉子ちゃんの、ある意味、天真爛漫で、純粋なキャラは、街の皆んなから慕われている。
肉子ちゃんを取り巻く、漁港の人たちの息遣いを活き活きと描き、ありのままでいたいという気持ちと、それに抗おうとする自意識を抱えながら、成長していくキクりんの成長の物語でもある。
数々の男に騙され、この北の果てとも言える港町で、自分の存在の希薄さに思い悩む時、母、肉子ちゃんの不器用であるながらも純度100%の愛情に抱かれる時、大きな涙と勇気をそっと届けてくれる。
★ハッとしてグッとポイント★
太陽の陽射しを受け、青々と光り輝く漁港の海を見て、
「めっちゃ海やなあ!」
と大絶叫して感動する、そんな肉子ちゃんが好きだ。
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