孫正義 300年王国への野望

杉本貴司 著 / 


その男は奥が深い。

とても深い。

だから面白い。


たった一代で、売上高が10兆円に迫る巨大企業を築いた、世界的な経営者。


孫正義。


革命児、破壊者、カリスマ、大ボラ吹き、異端の経営者、成り上がり者…

数々の異名で呼ばれ、世界を驚かせ続けるこの男の「正体」とは。


孫は若くして起業家になることを志し、早々と高校を中退し、渡米。

当時芽吹いたばかりのコンピューターの世界に触れ、人類史上最大のパラダイムシフト「情報革命」が世界を揺るがすことを実感し、その後、数々の事業を手掛けていき、時代のパイオニアとなっていく。


ソフトバンクという会社は、孫正義のワンマン経営と見られがちだ。

確かに絶対君主である彼の存在は大きいが、彼の脇を固める社員がいなければ、「天才経営者、孫正義」は成り立たない。


孫の情熱と行動力に導かれるように集まった強者たちを「ストリートファイター」と呼び、彼ら一人一人の物語りがまた実に面白い。(ここでは語り切れないので割愛)


孫を中心に開かれる会議は特に長いことで有名だ。

社員からはネバーエンディングストーリーと呼ばれ、納得のいかないことはとことんまで議論し尽くす。


「脳みそが千切れるくらい考えたのか!」

「一番分かる現場のやつを呼べ!」


中途半端な説明をする者には、机を激しく叩きながら容赦なく罵倒する。

しかし、相手の意見にも理があるとなれば、とことん納得がいくまで質問攻め。


「あいつらは部下というより戦友だ。一緒に苦しみ抜いたところで生まれる団結力と信頼関係。共に生き残った。それこそが志を共有することなんだ」


この「同志的結合」によりソフトバンクは、あらゆる規制や経営危機という荒波を越えて行くこととなる。


当時、NTTドコモとauの2強に独占されていた携帯キャリアの一角を勝ち取り、価格破壊を敢行し、アップル社のiPhoneとの独占契約に躍り出る。


千年に一度の国難と言われる東日本大震災時には、30万人の疎開計画を発表し、現地に自ら出向いていった。

社長を辞め、私財を投げ打ってでもこの国難を切り抜けるという孫の強い想いは、恩師によって納められたが、その後、孫は「アジア・スーパーグリット構想」という、風力発電や太陽光発電を主とした、自然エネルギーの世界規模でのインフラに着手して行く。


「僕は決して世の中を大きく変えるような発明をしたわけではない。目の前の2〜3年後の小銭を稼ぐことではなく、10年後や20年後に花を咲かせるものを、タネの段階で嗅ぎ分ける能力と、それに対してリスクを取りに行く覚悟が、人よりも強いのだと思う」


300年間成長し続ける企業を作るー


どこまでも深い。

この男の物語はまだ終わらない。


★ハッとしてグッとポイント★

日本における長期政権は江戸幕府の270年。

300年とは、これを越えるということ。

読んだら忘れないための備忘録

歳を重ねるにつて、読んだ端からすぐ忘れては、本屋でお気に入りの本を手に取り、帰ってみたら、自宅の本棚に全く同じものがある光景に辟易してしまう。 そんな負の連鎖を極力避けるべく、またせっかくの学びをより確かなものにするための備忘録です。

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