蒲生邸事件
宮部みゆき 著 /
SFタイムスリップ、殺人ミステリー、歴史時代小説、全てがミックスされたエンターテイメント作品。
物語は、ひとりの浪人生が、受験のためにあるホテルに泊まり、そのホテルが火災にあって、命からがらある男に救い出されるとこから始まる。
しかし、救い出された場所が、現在ではなく、雪の降りしきる、昭和11年の東京、ししかも、二・二六事件が起ころうとしている真っ只中であった。
彼を救い出した男は、タイムトラベルの能力を持ち、やもえず連れて来てしまったのだ。
突然、過去に放り込まれ、二・二六事件の史実すらろくに知らない青年が、現実を受け入れようと四苦八苦する中、一発の銃声と共にまた新たな問題に直面することとなる。
二・二六事件を契機に、日本は太平洋戦争へと突入し、泥沼の戦いへと向かう事実を知り、何とか阻止しようと試みるが、
ささいな事柄は変えられるが、大きな歴史の動きは変えられない。
ということを実感し、自分の無力さを抱えながら、過酷な試練にも負けず、たくましく生き抜こうとする人たちとの交流を通して、青年が成長していく姿が描かれる。
また、主人公が蒲生邸の女中のひとりに恋をし、いよいよ現代に戻らなくてはならなくなった時、その女中とある未来での約束をする。
物語終盤の畳み掛けは、感極まるものがあり、読み応えありの作品。
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