ユニクロ潜入一年

横田増生 著 / 


店舗数800軒、従業員数3万人、世界的ファストファッションのメガブランド、ユニクロ。

毎年成長を続ける巨大企業の陰に潜む「ブラック企業」というレッテル。

果たしてユニクロとは、一体どんな企業なのか?

現場の最前線に立ち、内部を赤裸々に告発する、執念のルポルタージュ。


そもそも、著者がユニクロの従業員となり、執筆し始めたきっかけがこうだ。


前著「ユニクロ帝国の光と影」で、ユニクロの生産工場での違法な長時間残業、賃金の未払い、違法な罰金制度、過酷で危険な労働環境等を暴き、発表したことで、著者の横田氏はユニクロから訴えられ、裁判へ。

その後、結果として、横田氏側の主張が全面的に認められ、ユニクロは敗訴となる。


裁判抗争が終わり、その後、生産工場の労働環境がどう変わったのか、ユニクロに取材を申し込むが、門前払い。

さらにユニクロの決算会見にも参加出来ないという始末。


理由はこうだ。

「社長の柳井が横田氏の出席は認めない」


そんな一方的な理由はあるか!

裁判ではこちらが勝訴している上、企業の会見参加の是非をいち社長個人が決めていい訳がない!


ならば、こっちにも新たな策がある。


柳井社長がある経済雑誌に語った記事にこうある。

「我々はブラック企業ではない。悪口を言っているのは、僕と会ったことがない人がほとんどだ。会社見学をしてもらい、あるいは従業員としてうちの会社で働いてもらって、どういう企業なのかぜひ体験してもらいたいですね」


そうか、この言葉は私への招待状だ。


こうして、横田氏はユニクロの潜入取材という形で、従業員として働くこととなる。

ここで、横田氏の取材への執念への発端が垣間見える。


「横田」という名前で、面接を受けると、記者であることがバレるので、横田氏は一旦離婚し、そして再婚し、妻の姓を名乗るという、ウルトラCを敢行する。

これなら偽名を使うことなく、正々堂々面接をパスできるからだ。


かくして、横田氏の執念の潜入ルポが始まる。

日本一過酷で忙しいというユニクロの店舗で、汗水たらし働き、そこで働く同僚たちの生の声を聞き、毎週部長会議ニュースで柳井社長からの檄が飛び、二転三転する本部からの無理難題に押し潰される様子がつぶさに語られる。


なんにしろ、トップダウン体質の企業、現場の声は反映されず、繁忙期には過度な労働を強いて、閑散期には、経費削減とばかりに人件費を削り出す。

ノルマが達成できないのは、現場の責任とばかりに叱責し、抱えきれない仕事があるにも関わらず、残業はするなと御達しが来る。


これほどまでに、トップと現場の間にズレや温度差があるとは。


真のユニクロの姿を見てないのは、あなただ。

柳井社長、あなたこそが従業員として、いの一番に働くべきなのだ。


「これは奴隷の仕事だよ…」

と自社の社員が、悲痛の表情で言い放った無間地獄の荷受け作業をやってみることだ。


それこそがユニクロが常日頃提唱する「働き革命」の第一歩だから。


★ハッとしてグッとポイント★

ちなみに柳井社長の個人総資産額は、2兆4200億円で日本人トップです。

読んだら忘れないための備忘録

歳を重ねるにつて、読んだ端からすぐ忘れては、本屋でお気に入りの本を手に取り、帰ってみたら、自宅の本棚に全く同じものがある光景に辟易してしまう。 そんな負の連鎖を極力避けるべく、またせっかくの学びをより確かなものにするための備忘録です。

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