困難な成熟

内田樹 著 / 


武道論、教育論、映画論と様々な分野で活躍する哲学者、内田氏によるエッセイ集。


「社会の中で生きるとは」「働くとは」「与えるとは」「伝えるとは」などの様々な日常の問題から、政治経済、教育まで、質問形式で答える。


内田氏の的確で、鋭い考察に思わず納得する事柄から、え、そんな考えもあるのか?と考えるきっかけを与えてくれる。


もちろんここで全部は書ききれないんで、印象に残ったものをひとつ。


大学で教鞭を振るう内田氏の考える「教育」とは。

人にものを教えるための適性とは、「おせっかい」と「忍耐力」である。


「教わりたい」というニーズがあって、「教える人」を集めてきて、学校は出来るのではなく、本来、「教えたい」というおせっかいな人がまずいて、その人が「教わりたい」人を集めてきて、学びの場というものは立ち上がる。


「とりあえずお代はいらないから、とにかく私の話を聞いてくれ」という使命感を持っていないと教育は始まらない。


また教育の受益者は「本人」ではない。

教えるというのは共同体を支える「次世代」を作り出すための仕事。

共同体そのものが、受益者となっていなければならない。


そして教育は「弱者ベース」でなければならない。

打ってもなかなか響かない、十を聞いてようやく一を知るといったレベルの子供達をしっかりフォローできる「教えるシステム」を設計しなければならない。


しかし、今の教育現場は、費用対効果ばかり求めたり、自己利益ばかりに躍起になる者がなんと多いいことか…


というわけで、教える時に必要なのは、「おせっかい」と「忍耐力」なのです。


以上簡単ではありますが、抜粋。


その他、興味が尽きぬ話ばかりです。

良ければ、内田氏の「おせっかい」に耳を傾けてみては。


★ハッとしてグッとポイント★

ある日気が付いたら、前より少し大人になっていた。

そういう経験を積み重ね、薄皮を一枚ずつ剥いでいくように、人は成熟していく。

読んだら忘れないための備忘録

読んだら忘れないための備忘録

歳を重ねるにつて、読んだ端からすぐ忘れては、本屋でお気に入りの本を手に取り、帰ってみたら、自宅の本棚に全く同じものがある光景に辟易してしまう。 そんな負の連鎖を極力避けるべく、またせっかくの学びをより確かなものにするための備忘録です。

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