鳩の撃退法

佐藤正午 著 / 


その卓越した文章力、巧みな物語構成で、プロの小説家の間でも一目置かれ、人気の高い佐藤正午。

あまり世間一般の知名度は低いが、間違いなく、日本文学界に輝く作家のひとりである。


今回のこの長編サスペンスも、一筋縄では収まらない、世界観が満載である。


物語は、元直木賞作家で、今は風俗店の送迎ドライバーが、知り合いの古本屋の主人から遺品としてスーツケースを託されるとこから始まる。

中を見てみると、なんと3000万円を超える札束が。

しかし、喜びも束の間、その札束の中に三枚の偽札が混じっていた…

その偽札の行方を巡って、主人公が裏の人間に追われるスリリングな展開から、彼の周りを取り巻く、様々な人間のドラマが展開され、それらが各々の伏線となり、予想外の結末へと突き進む。


そして、この物語の主人公である、元作家が、この自分の身の回りに起こる出来事を小説に書き連ね、それを読者に読ますという、いっけん混沌としそうな展開だが、そこは佐藤正午の変幻自在の筆力が冴え渡り、面白い。

また、ユーモアと遊び心が随所に散りばめれれて、思わずニヤリとする場面も。


確かに、自分の感想を除けば、好き嫌いが分かれるところではあるが、こんな小説を生み出せる作家さんは、間違いなく早々いる者ではない。


ハマれば間違いなく、抜け出せなくなる、トリックスターの世界に身を委ねるのも乙なもんである 。


★ハッとしてグッとポイント★

小説表現の臨界点を超えた、かつてない読書体験を約束します。

読んだら忘れないための備忘録

歳を重ねるにつて、読んだ端からすぐ忘れては、本屋でお気に入りの本を手に取り、帰ってみたら、自宅の本棚に全く同じものがある光景に辟易してしまう。 そんな負の連鎖を極力避けるべく、またせっかくの学びをより確かなものにするための備忘録です。

0コメント

  • 1000 / 1000