植物はなぜ薬を作るのか
斉藤和季 著 /
鎮痛薬 モルヒネ
解熱薬 アスピリン
抗がん薬 ビンカアルカロイド
万能薬 ポリフォノール
これら全ての薬品は植物から作られたものである。
全ての植物は太陽、水、養分から「代謝」と呼ばれる活動を行なっている。
「代謝」の中でも「一次代謝」は全ての植物に共通する最低限成長するための成分を確保するもの。
そして「二次代謝」では「より良く生きるため」の化学成分を作り出す。
この植物の「より良く生きるための化学成分」が薬の源となっている。
例えば、捕食者から食べられないように、植物は動物に対して苦い味や渋い味、時には神経を麻痺させたりする有毒な化学成分を作り出す。
この有毒な化学成分を抽出し、我々人間の体内の病原菌撃退へと応用する薬となり得るわけです。
さらに全ての植物が同じような防御化学成分を作るとすると、捕食者はそれに対応する耐性を容易に獲得できてしまうため、他の植物が真似できない防御化学成分を作り出すように進化する。
その結果、植物界全体での防御化学成分は多様性を増し、それぞ固有の武器を手にすることとなる。
では、何故植物は「防御化学成分」という武器を手に入れなければならないのか。
それは「動かない」植物の生き残りをかけた戦力に他ならない。
動けない植物の巧み生存戦略が、薬の元となる多様な成分をもたらしたのだ。
それはまさに自然界が生み出す奇跡かもしれない。
我々はその恩恵を授かっているだけなのだ。
光合成により有害な二酸化炭素を分解し、酸素を供給し続け、さらに言えば、石油や石炭などの資源は、元を辿れば、植物や微生物の死骸が長い年月をかけ蓄積されたものが、原料になっていうという。
植物は太古の昔から現在に至るまで、地球を決して汚さず、環境浄化をしながら、有用な化学物質を作り出す、最も高度に設計された精密化学工場なのだ。
緑の地球を守ろう。
もっと緑を増やし続けよう。
それが我々人類の生き残りをかけた、最大の戦略なのだ。
★ハッとしてグッとポイント★
現在植物種の総数は、約20万前後だと言われている。
薬として有効だと定められた植物種はわずか全体の10%にしか過ぎない。
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