ひとり歩きの登山術

工藤隆雄 著/ 


私はもっぱら登山に行くときは、単独行を好む。

気軽にマイペースで、気の向くまま山行出来るからだ。


登山口までのアプローチの手段(車、電車、バス)を考え、無理のない活動時間とルートを決め、水分の確保や食事の管理もしっかりと練っていくという、結構な知的作業を要する。

山に入る前にこの作業を怠るととんでもない目に遭うからだ。


しかし、これだけ用意周到で入山しても、時に登山道を見失い、迷ったりもする。

そんな時は、先人の記してくれたヒント、赤いリボンが木々の端々に結ばれているのを発見し、感謝と共に一安心するという塩梅である。


慣れてくると、足跡を追ってみたり、集中して林の先を凝視すると、次第に登山道が導き出され、目の前に広がって行くという、第六感的な神秘な力も宿ったりもする。


汗水垂らし、身体中が悲鳴をあげながら、辿りついた山頂での食事は格別で、英気を養うと共に達成感に身を包む。


基本的に平日の登山なので、山頂には数名のハイカーしかいなく、時には独り占めってこともしばしばだ。


下山中、浮き石に足を取られ、転倒という場面もあるが、大事には至らず無事に麓に下りてこれた時は、山の神様に「ありがとうございました」と呟く。


登山は、けして生易しい娯楽ではない。

長丁場の山頂を目指す体力や予期せぬトラブルに堪える精神力と危険回避能力を要する。

ある意味、いつも危険と隣り合わせで、単独行となると、独りであらゆる局面に対峙しなければならない。


故に一般登山道以外のコースには立ち寄らないし、山頂にばかり固執せず、ビバークすることも忘れてはならない。

そして、すれ違うハイカーからの情報収集も怠ってはならない。


いつ何時も山と真摯に向き合えば、きっとそれに応えてくれるものだと、今日もまたピークをハントしに行こう。

読んだら忘れないための備忘録

歳を重ねるにつて、読んだ端からすぐ忘れては、本屋でお気に入りの本を手に取り、帰ってみたら、自宅の本棚に全く同じものがある光景に辟易してしまう。 そんな負の連鎖を極力避けるべく、またせっかくの学びをより確かなものにするための備忘録です。

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