善人ほど悪い奴はいない
中島義道 著 /
世の中には「社会的弱者」と称する者たちが枚挙にいとまがない。
自分たちが社会的に弱い立場にいることに負い目を感ずることが全くなく、そこから脱するなんの努力もせず、むしろ自分の弱さを当然のごとく持ち出し、「弱者の特権」を要求する人たち。
と、著者は定義する。
彼らは「平時」には、極めて温厚で柔和であるが、身の安全が脅かされる「戦時」になるや否や、全てをかなぐり捨て、標的を容赦なく攻撃するのである。
自分たちが弱いことを全身で正当化する弱者、すなわち「善良な弱者」。
ネット上で、匿名の名の下に、ターゲットを見定め、一斉に攻撃に出る。
公共事業反対運動の席上で、大声を張り上げ、騒音がうるさいだの、日常生活に支障が出るなど、シュプレヒコールを上げる。
芸能人の不倫騒動を焚きつける善良なる弱者。
実業家の不祥事につけ込む善良なる弱者。
そこにうごめくのは、嫉妬と羨望と増悪と怠惰と投げやりと自嘲。
これらのボロ布を幾重にもまとい、彼らは自分のさもしい欲望を全開させ、「善人の暴力」が完成する。
しかし彼らは、その凄まじき暴力による迫害に、全く気付いていないのだ。
だって、自分たちは「正しい」のだから。
善良なる弱者は、常に不平を抱いている。
しかしその不平を少しでも身の危険のあるところで、発散させることはない。
積もり積もる不平は、絶対安全な場所でのみ表出するのだ。
善人たちはいつの時代も自己批判をしない。
「みんな」と同じ行動を取ることに一抹の疑問も感じない。
善人たる正しさの根拠はひとつだけ、「みんな」である。
では「みんな」とは誰か?
最も数の多い者たち、最も物を考えない者たち、最も鈍感で、最も自己反省しない者たち。
それでいて、居直っている者たち。
弱さ故に自分が認められないこと、報われないことにどうしても諦めきれない輩が、排泄する言葉のゴミ溜め。
その臭気たるや、鼻をつまみたくなるほどに凄まじいのだ。
あなたは「善良な弱者」ではないですか?
★ハッとしてグッとポイント★
ヒトラーは大衆=弱者の心理を知り尽くした。
大衆の心を、その愚かさ、単純さ、飽きっぽさを掴んだ故に、権力を掌握したのだ。
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