イチロー・インタビューズ 激闘の軌跡
石田雄太 著 /
走攻守、あらゆるプレーと野球への真摯な姿勢で、世界中のファンを沸かせたイチローは、その言葉でも私たちに多くの示唆と力を与えてくれた。
あの歴史的偉業の瞬間。
大きな決断の時。
彼は何を考え、何を感じていたのか。
「僕の言葉にウソはない」
激動のイチローの野球人生、彼の言葉を通じて語られるその軌跡。
グランドに立てば、クールな眼差しで、感情表現を表に出さない。
しかし、一旦グランドを離れれば、気の合った仲間と大いに語り合いう気遣いの男。
お笑いが好きで、吉本新喜劇のファンでもある。
そんなイチロー、決して上っ面な想いを言葉にしない。
心の奥深い所から発した彼の言葉には、常に理由があり、毅然としたロジックがある。
だから時を経てもブレることがない。
「できるはずのことができない…気分悪いです。逃げ出したいし、球場に行くことも憂鬱になる。野球ってこんなに難しいものなのかと心底思いましたよ。毎年200本を前にすると、精神的に乱れを起こし、肉体に影響を及ぼしてしまう」
メジャー新人賞の最多安打の記録を塗り替え、新人賞とリーグMVPとを同時受賞し、華々しくデビューしたイチロー。
その後も数々の偉業を成し遂げ、我々に輝きを放ち続ける男は、毎シーズン自分のバッティングと向き合いながら試行錯誤を繰り返していた。
「そりゃあ、苦しいですよ。苦しいけど、バッティングに終わりはない。もうこれで終わりってのがないから、救われるんです。もし、2割9分3厘でも、まあ、いいんじゃないの、と感じている自分がいたら、ぶっ殺してやりたい(笑)」
進化の先には必ず壁がある。
イチローのバッティングはその繰り返しだ。
そんなイチローにも翳(かげり)は訪れる。
2019年、メジャー最年長選手。
それがイチローの立ち位置だった。
移籍を数度繰り返すも、なかなかスタメンでの機会に恵まれず、打席に立つこともままならない。
「僕にとって、過去にやってきたこと、昨日までの結果は何の意味もないものと思ってやってきました。どこにいようが、やる気を失ったことはないし、力を抜くこともない。毎日、これ以上出来ないという状態でやってきたつもりなので、これを続けていくことが僕に出来ることなのです」
イチロー選手が持っている最も重要な武器。
それは、飛び抜けたバッティングセンスでもなければ、類い稀なトータルバランスでもない。
この「心」の持ち方なのだ。
「もし誇れることがあるとすれば、4000本のヒットを打つには、僕の打率で言うと、8000回以上、悔しい想いをしてきているんですよね。そういうことと常に自分なりに向き合ってきたという事実はあるので、そこじゃないかと思います」
8000回のアウトを忘れないイチロー。
だから世界の頂きまで上り詰めることができ、ここまでくることができたのだ。
「後悔などあろうはずがない」
引退発表の記者会見で、朗らかに断言し、これで草野球を思う存分楽しめると笑うイチロー。
そこには初めて野球の球を握りしめた頃の野球少年、鈴木一朗がいた。
「独り歩きして随分先へ行ってしまった〝イチロー〟を追い掛けた時期もありました。でも今は感謝したいですね。〝イチロー〟は間違いなく、僕の原動力でした」
やはりこの男、とてつもなくカコイイ。
★ハッとしてグッとポイント★
まだまだイチローの言葉は続きます。
WBCでの日本代表として闘った言葉や王監督との言葉。
妻、弓子さんへ言葉などなど。
どれもこれも染み渡ります。
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