捏造の科学者

須田桃子 著 / 


「STAP細胞はあります」


論文の捏造、改ざんの疑惑が騒がれる中、研究ユニットリーダーである小保方氏は、記者会見でそう言い切った。

その僅か五ヶ月後、論文は完全撤回となり、科学史に残る大スキャンダルとなる。


iPS細胞を凌ぐ、「生物細胞学の常識を覆す新たな万能細胞」として世界を驚かせたSTAP細胞とは一体何だったのか?


2014年、科学誌ネイチャーへの掲載から、華々しい記者発表、新鋭の若き女性科学者の登場、暴かれる捏造の数々、理研の歪んだ構造、その一部始終を長年科学ジャーナリズムに携わってきた著者が、冷静な目で記す。


論文の主な著者は、小保方氏、理研CDB副センター長笹井氏、山梨大学教授若山氏である。

特に笹井氏においては、再生医療の分野では世界的権威で、彼が共著者であることで、当初、誰もが疑いの余地を持たなかった。


しかし、記者発表から僅か二週間で論文への様々な指摘が、表立ってくる。

過去の論文からの写真画像の転用。

他の論文からの数々の引用。(コーピーアンドペースト)

さらには、写真を切り貼りしての都合の良いありもしない画像の捏造。


「小保方さんは相当、何でもやってしまう人ですよ」


小保方氏の過去の博士論文を見てみると、数々の画像転用や他の論文からのコピペが、その当時から頻繁に指摘されていたのが発覚する。


小保方氏は、改ざんや捏造ではない…ただ私の不勉強で未熟なミスであり、STAP細胞の存在は間違いないものであると主張する。


なぜ数々の論文発表で、実績を築き上げてきた笹井氏や若山氏の両氏が、こんなずさんなSTAP細胞論文を見抜けなかったのか?

若山氏は、画像転用や論文引用が発覚し、すぐに論文撤回を呼びかけるが、小保方氏と笹井氏は頑なに撤回に反対する姿勢を終始貫く。


「私は二百回以上成功している。

そこにはたくさんのコツやレシピのようなものがる」


もはやそんな小保方氏の主張に信憑性は乏しく、他の研究機関からも再現に成功したという声はいっこうに聞こえてこない。


そんな混乱の中、理研は「STAP細胞の有無」を明確にさせるべく、再現実験に取り組むと発表する。

撤回された綻びだらけの論文に対して、とてもまともな科学的考察が出来るわけがない。

一部の科学者の好奇心の為に莫大な税金を注ぎ込むことの無意味さ。

ならば、どうしてこのような事態に陥ったのか、誰が関与していたのか、今後どうあるべきなのかをもっと深く掘り下げるべきだ。


小保方氏が産み墜とした「STAP細胞という幻想」に科学者やジャーナリストが浮き足立ち、論文撤回という撃鉄を受け、CDBを解体に追い込み、何よりも日本の科学者の「信頼」という研究者にとって最も大切なものを失った。


そして、CDB副センター長だった笹井氏が、センター内で首を吊って自らの命を絶つ。

彼のカバンの中には遺書が残されていた。


「限界を超えた。精神的に疲れました。

小保方さんをおいて、全てを投げ出すことを許してください…」


負の連鎖を導いたのは、小保方氏ひとりの責任とは言えないのは確かだ。

しかし、彼女が受ける代償はあまりにも大きい。


★ハッとしてグッとポイント★

結局、約一年間に及ぶ再現実験の結果、一度としてSTAP細胞は再現されることはなかった。


読んだら忘れないための備忘録

読んだら忘れないための備忘録

歳を重ねるにつて、読んだ端からすぐ忘れては、本屋でお気に入りの本を手に取り、帰ってみたら、自宅の本棚に全く同じものがある光景に辟易してしまう。 そんな負の連鎖を極力避けるべく、またせっかくの学びをより確かなものにするための備忘録です。

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